貯金ができない理由を、意志の弱さだと考えている人は多くいます。

しかし実際には、貯まらない仕組みで生活しているだけであることがほとんどです。

余ったら貯める。この方法は、ほぼ確実に失敗します。使えるお金が口座にある限り、支出はその金額まで膨らむからです。月末に残高を見て「今月も残らなかった」と思うのは、意志の問題ではなく設計の問題です。

解決策は単純で、使う前に分けてしまうことです。

先取り貯金とは

給料が入った直後に、貯める分を別の場所へ移し、残りで生活する方法です。

順序が逆になっているだけですが、結果は大きく変わります。

後者では、貯金額が先に確定します。生活費が足りなくなれば調整が必要になりますが、その調整は毎月の支出の中で行われ、貯金には手がつきません。

重要なのは、手動でやらないことです。毎月自分で振り替える方式は、いずれ止まります。自動振替や自動積立の設定にしてください。一度設定すれば、その後は何もしなくても続きます。

3つの口座に分ける

先取り貯金を機能させるには、口座を役割で分けます。最小構成は3つです。

1. 生活費の口座

給与が振り込まれ、家賃・光熱費・カードの引き落としが行われる口座です。日常の支出はすべてここから出ます。

ここに残っているお金は、使ってよいお金です。残高を見て判断できる状態にしておきます。

2. 備えの口座

予定はしていないが、いずれ必ず起きる支出のための口座です。

これがないと、突発的な支出のたびに貯金を崩すことになります。「貯まってきたと思ったら、何かあって元に戻る」という状態の原因は、たいていこの口座がないことです。

目安は生活費の3〜6か月分とよく言われますが、まずは10万円でも構いません。ゼロと10万円では、精神的な余裕がまったく違います。

3. 貯める口座

当面使わないお金を置く口座です。ここには手をつけません。

生活費の口座とは別の金融機関にすると、より確実です。同じ銀行だと、アプリ上で残高が見えてしまい、心理的な距離が近くなります。すぐには引き出せない場所に置く方が残ります。

金額の決め方

「収入の何割」という基準はよく見かけますが、まずは続く金額から始める方が確実です。

手順

  1. 直近3か月の支出を確認する。家計簿がなければ、口座の出金額とカードの利用額の合計で構いません
  2. 収入から支出を引く。これが、実際に残っている金額です
  3. その7割程度を、最初の先取り額にします

3で全額にしないのは、余裕を残すためです。ぎりぎりで設定すると、一度足りなくなった時点で仕組みごと崩れます。

もし2の計算で残額がマイナス、あるいはほぼゼロなら、先取り貯金より先に固定費の見直しが必要です。貯める原資がない状態で仕組みだけ作っても機能しません。

金額を上げるタイミング

半年ほど続けて、生活費の口座が毎月余るようであれば、先取り額を上げます。

逆に、毎月ぎりぎりで、備えの口座から補填しているなら、下げてください。下げることは失敗ではありません。続く金額に調整するのが正しい運用です。

設定のしかた

自動化の方法は、いくつかあります。

自動振替(自動送金)。銀行のサービスで、指定日に指定額を別口座へ移します。手数料の有無を確認してください。

自動積立定期預金。同じ銀行内で、毎月一定額を定期預金に振り替えます。引き出しに手続きが必要なぶん、使いにくくなります。

財形貯蓄・社内預金。勤務先に制度がある場合、給与から天引きされます。口座に入る前に分かれるので、最も確実です。

証券口座の自動積立。長期の資産形成を目的とする場合の選択肢です。ただし元本が変動するため、備えの口座とは性質が違います。生活の備えは、値動きしない場所に置いてください。

設定日は、給料日の翌営業日にします。給料日当日だと、入金のタイミングによっては残高不足で振替が失敗することがあります。

よくあるつまずき

足りなくなって貯金を崩す

備えの口座がない場合に起こります。突発的な支出の受け皿を先に作ってください。順番としては、備えの口座 → 貯める口座です。

ボーナスを当てにする

毎月の設定を厳しくして、足りない分をボーナスで埋める形にすると、ボーナスが減った年に破綻します。毎月の仕組みは、毎月の収入だけで完結させてください。

口座を増やしすぎる

目的別に細かく分けると、管理が破綻します。3つで始めて、必要になってから増やしてください。

家族に共有していない

同居家族がいる場合、片方だけが把握している仕組みは長続きしません。何のためにいくら分けているのかを共有してください。「使えるお金が減った」としか見えない状態は、不満の原因になります。

家計簿がなくても回る

先取り貯金の利点は、細かい家計簿がなくても機能することです。

貯める額が先に確定しているので、生活費の口座の中で何にいくら使ったかは、厳密に把握しなくても問題ありません。残高が足りていれば、それでよいのです。

家計簿が続かない人ほど、この方法が向いています。記録する労力を、仕組みを作る一度の作業に置き換えるということです。

まとめ

  1. 口座を3つに分ける(生活費・備え・貯める)
  2. 給料日の翌営業日に、自動で振り替える設定にする
  3. 金額は、実際に残っている額の7割程度から始める
  4. 足りなければ下げる。続けることが目的です

意志で貯めようとするのをやめて、仕組みで貯まるようにする。設定は一度で終わり、あとは自動で続きます。

固定費の見直しで浮いたお金も、この仕組みに乗せてください。生活費の口座に残しておくと、いつの間にか使われます。見えない場所に移せば、残ります。