医療費控除を使うと決めても、何を税務署に出すのかが分からないと手が止まります。結論から書くと、領収書は提出しません。「医療費控除の明細書」を作って添付します。ただし領収書は捨てられません。この2つが同時に成り立つ理由を整理します。
出すのは明細書、領収書は手元に置く
国税庁は、提出書類をこう説明しています。
医療費の領収書から「医療費控除の明細書」または「セルフメディケーション税制の明細書」を作成し、確定申告書に添付してください。
添付するのは明細書です。領収書の束を封筒に入れて送るのではありません。では領収書は捨ててよいかというと、そうではありません。
医療費控除の明細書の記載内容を確認するため、確定申告期限等から5年を経過する日までの間、医療費の領収書の提示または提出を求める場合があります。
つまり領収書は出さないが、5年間は手元に保存しておくのが正しい扱いです。求められたときに出せなければ、明細書の内容を証明できません。
保存の仕方
年ごとに封筒や箱を1つ用意して、そこに入れるだけで足ります。月ごとに仕分ける必要はありません。明細書は病院・薬局ごとに合計する形なので、年末に一度並べ替えれば済みます。
大事なのは、家族ぶんを同じ箱に入れることです。生計を一にする家族の医療費は合算できるので、別々に管理していると集計のときに抜けます。
「医療費通知」があると記入が減る
健康保険から届く医療費通知(医療費のお知らせ)がある場合、それを添付することで明細書の記載を簡略化できます。一件ずつ書き写す手間が省けます。
国税庁は、医療費通知として使えるものの条件を挙げています。次のすべてが記載されている必要があります。
- 被保険者等の氏名
- 療養を受けた年月
- 療養を受けた者
- 療養を受けた病院、診療所、薬局等の名称
- 被保険者等が支払った医療費の額
- 保険者等の名称
後期高齢者医療広域連合から発行された書類の場合は、3が除かれます。インターネットで保険者から受け取った医療費通知情報も、電子署名と電子証明書が付いているものであれば使えます。
なお、医療費通知を添付した分については領収書の保存義務から外れます。通知に載っていない分(通知の対象期間外、自費診療、ドラッグストアでの購入など)は、引き続き領収書が必要です。
市販薬を使う場合は別の明細書
セルフメディケーション税制を選ぶ場合は、「セルフメディケーション税制の明細書」という別の様式になります。医療費控除の明細書とは違う紙です。
さらに注意点があります。国税庁の確定申告書等作成コーナーには、領収書の件数が多い人向けに「医療費集計フォーム」という入力支援がありますが、
セルフメディケーション税制の適用を受ける方は、「医療費集計フォーム」をご利用いただけません。
と明記されています。件数が多い年にこの税制を選ぶと、入力の手間が増えます。どちらが有利かを金額で比べるときに、この手間も頭に入れておくと判断しやすくなります。
源泉徴収票は添付しなくてよい
給与所得のある人について、平成31年4月1日以後、給与所得の源泉徴収票は確定申告書への添付も提示も不要になりました。
ただし国税庁は、申告書を作成する際には引き続き必要だと注意しています。出さなくてよいだけで、見ずには書けません。税務署に行くときは持っていくことになります。
明細書に書くのは「一件ずつ」ではない
領収書の枚数が多いと、同じ数だけ行を書くのかと身構えます。実際は病院・薬局ごとにまとめて1行で足ります。同じ歯科に12回通ったなら、その歯科について合計額を1行書くだけです。
この集計の単位が分かると、年末の作業が大きく変わります。領収書を日付順に並べるのではなく、支払先ごとに山を作るのが早道です。山ごとに合計を出せば、そのまま明細書の1行になります。
交通費の扱い
通院にかかった交通費も対象になる場合がありますが、領収書が出ないことがほとんどです。この場合は、いつ・どこへ・いくらかかったかを自分で記録しておきます。領収書がないものは、記録そのものが証拠になります。
年末にまとめて思い出すのは無理があるので、通院のたびに1行メモしておくのが現実的です。手帳でもスマートフォンのメモでも構いません。
年末調整では処理されない
会社員が取りこぼす最大の原因がここです。医療費控除は年末調整の対象外で、勤め先に書類を出しても処理されません。自分で確定申告することになります。
生命保険料控除や扶養控除は年末調整で処理されるため、「控除は会社がやってくれるもの」という感覚ができあがります。医療費控除とふるさと納税(ワンストップ特例を使わない場合)は、その外側にあります。
ふるさと納税のワンストップ特例については別の記事にまとめています。確定申告をする年は、ワンストップ特例の扱いが変わる点にも注意が必要です。
還付の申告は、期限を過ぎてもできる
確定申告の期間に間に合わなかった場合でも、還付を受けるための申告はあとから提出できます。過去の年の分に気づいたときも同じです。
ここで効いてくるのが、さきほどの5年間の保存です。領収書が残っていれば、あとから明細書を作れます。残っていなければ、制度を知っていても金額を証明できません。
やることは、箱をひとつ置いて入れるだけです。申告するかどうかは、年末に合計を出してから決めれば間に合います。
作るときの手順
- 年ごとの箱から、家族ぶんの領収書をすべて出す
- 健康保険から医療費通知が届いていれば、それも用意する
- 病院・薬局ごとに合計し、明細書に記入する(通知がある分は簡略化できる)
- 高額療養費や保険金で戻った額を、その治療にかかった医療費を限度に差し引く
- 確定申告書に明細書を添付して提出する
- 領収書は5年間保存する(通知を添付した分を除く)
国税庁の確定申告書等作成コーナーを使えば、画面の案内に沿って金額を入力するだけで申告書を作成・提出できます。税務署へ行かなくても完結します。
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出典:国税庁 タックスアンサー No.1120「医療費を支払ったとき(医療費控除)」(令和8年4月1日現在法令等)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm