国民年金の保険料が払えないとき、黙って放置するのと、申請して免除・猶予を受けるのとでは結果がまったく違います。同じ「払っていない」でも、受け取れる年金も、いざというときの保障も変わります。日本年金機構の説明をもとに整理します。

免除は4種類、猶予は別枠

保険料の免除には全額・4分の3・半額・4分の1の4種類があります。前年所得が一定額以下の場合や失業した場合などに、申請して承認されると納付が免除されます。

これとは別に納付猶予制度があります。こちらは免除ではなく、納付を先送りする仕組みです。後述するとおり、年金額への反映が免除とは異なります。

承認の基準(前年所得)

日本年金機構が示している基準は次のとおりです。

全額免除の式に数字を入れると、目安が見えます。

審査の対象になるのは前年の所得です。今年収入が落ちたからといって今年の所得で判断されるわけではありません。ただし失業した場合は特例の扱いがあるため、離職票を持って窓口で確認する価値があります。

一部免除は「残りを納める」必要がある

見落としやすいのが、全額免除以外は残りの保険料を自分で納めるという点です。日本年金機構は令和8年度の納付額を次のように示しています。

この3つから逆算すると、令和8年度の保険料は月17,920円です(13,440円 × 4 ÷ 3、8,960円 × 2、4,480円 × 4 のいずれも17,920円になります)。

一部免除の承認を受けたのに残りを納めないと、その期間は未納と同じ扱いになります。免除の申請をして安心してしまい、残額の納付を忘れるのがいちばんもったいない形です。

年金額にどう反映されるか

免除された期間は、保険料を全額納付した場合と比べて年金額が低くなりますが、ゼロにはなりません。

金額で見ると差がはっきりします。昭和31年4月2日以後生まれの方の場合、老齢基礎年金は40年納付で847,300円、40年すべて全額免除だと423,650円(国庫負担2分の1で算出した場合)です。ちょうど半分になります。

未納のままにした場合との差

ここがいちばん重い違いです。日本年金機構は、未納のままにしておくと障害基礎年金・遺族基礎年金を受け取れない場合があると明記しています。

不慮の事故や病気が発生してから、過去にさかのぼって申請を行っても、障害基礎年金の保険料納付要件に算入されません。

免除や猶予の承認を受けていれば、その期間中に障害や死亡といった事態が起きても、一定の要件に該当すれば受け取れます。金額の目安は障害基礎年金1級が1,059,125円、2級が847,300円、遺族基礎年金は子1人がある配偶者で1,091,100円です。

払えないときに何もしないのと、申請しておくのとでは、ここで差がつきます。保険料を納められないこと自体より、申請しないことのほうがリスクが大きい、という構造です。

あとから納める(追納)

免除・納付猶予の承認を受けた期間の保険料は、10年以内であれば申し出により後から納付できます。これを追納といい、老齢基礎年金の受給額を満額に近づけられます。

10年という期限があるので、収入が戻ったときに古い年度から順に片づけていく形になります。期限を過ぎた分は追納できません。

申請できる期間にも決まりがある

免除・納付猶予は、思い立った月から先だけが対象になるわけではありません。日本年金機構は、申請できる期間と、審査の対象になる前年所得の組み合わせを一覧で示しています。さかのぼって申請できる範囲があります。

年度の途中で収入が落ちた場合、どの年度の所得で審査されるかによって結果が変わります。窓口で「いつからいつまでの分を、どの年の所得で見るのか」を確かめてから申請書を書くと、出し直しが減ります。

学生は別の制度

学生の場合は、この免除・納付猶予ではなく学生納付特例という別の仕組みが用意されています。申請先や所得の基準が異なるため、在学中の人はそちらを確認してください。

「猶予」を選ぶときに知っておくこと

納付猶予は、年金額に反映されません。受給資格期間にはカウントされるので「年金を受け取る権利」は守られますが、金額は増えません。

一方、全額免除なら全額納付した場合の2分の1が反映されます。同じ「納めていない期間」でも、免除のほうが将来の金額は大きくなります。所得の基準を満たして免除が受けられるなら、猶予より免除のほうが有利です。

どちらも追納の対象になるので、収入が戻ったときに10年以内で埋められる点は共通です。

年金額は「ゼロか満額か」ではない

保険料を納められない時期があると、将来の年金が丸ごと消えるように感じられます。実際には区分ごとに段階がついていて、申請しているかどうかで段が変わる仕組みです。

老齢基礎年金で見ると、40年納付で847,300円、40年すべて全額免除で423,650円。その差は年42万円ほどで、受け取る期間を考えると小さくありません。だからこそ追納の制度があり、10年の期限が設けられています。

家計が苦しい時期に満額を納めるのは現実的ではありません。できるのは「申請しておくこと」と「10年を覚えておくこと」の2つです。どちらもお金はかかりません。

手順

固定費を見直す順番については、別の記事にまとめています。

出典:日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」(令和8年4月時点、納付額は令和8年度)https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/20150428.html