節約を始めるとき、多くの人がまず食費に手をつけます。買い物のたびに金額が目に入るので、削るべき場所だと感じやすいからです。

しかし食費の節約は、成果が出ても翌月にはまた同じ努力が必要になります。今週がんばっても、来週の買い物では最初からやり直しです。

一方、固定費は一度手を動かせば、その後は何もしなくても毎月効き続けます。同じ「月3,000円の削減」でも、意識し続けなければならない3,000円と、放っておいても減り続ける3,000円では、家計に与える負担がまったく違います。

この記事では、見直す価値のある固定費7項目を、着手する順番とあわせて整理します。

なぜ固定費から手をつけるのか

固定費の性質は、変動費と3つの点で違います。

節約が続かない最大の理由は、我慢の総量が増えることです。固定費の見直しは、我慢を増やさずに支出を減らせる数少ない方法です。

逆に言えば、固定費を放置したまま食費だけを削っていると、いちばんつらい方法で、いちばん小さな成果を取りに行っていることになります。

着手する順番の決め方

7項目すべてを一日でやろうとすると、たいてい途中で止まります。判断が必要な項目と、機械的に処理できる項目が混ざっているためです。

順番は次の基準で決めます。

  1. 判断がいらないものから。使っていないサブスクの解約に迷いは要りません
  2. 効果が大きいものを早めに。金額の大きい項目ほど、後回しにする損が大きくなります
  3. 家族の合意がいるものは最後に。保険や車は、一人で決められないことがあります

以下、この順に並べています。

1. サブスクリプション(所要 30分)

真っ先に手をつけるべき項目です。判断が簡単で、その場で終わります。

動画配信、音楽、クラウドストレージ、アプリの有料プラン、ニュースの購読、ジムの会費。一つひとつは数百円から千数百円ですが、契約したこと自体を忘れているものが混ざっているのがこの項目の特徴です。

洗い出しは、クレジットカードと決済アプリの明細を12か月分さかのぼるのが確実です。毎月同じ金額が同じ日に落ちているものを拾っていきます。年払いにしている契約は12か月見ないと出てこないので、3か月分だけ見て終わりにしないでください。

判断の基準は「今月使ったか」の一点で十分です。使っていないが今後使うかもしれない、というものは解約してかまいません。必要になったら入り直せます。

2. 通信費(所要 2〜3時間)

金額の大きさと、削減率の高さが両立する項目です。

大手キャリアで大容量プランを契約したまま、実際には毎月数ギガしか使っていない、という状態は珍しくありません。まず直近3〜6か月の実際のデータ使用量を確認してください。契約プランではなく、使った実績です。

そのうえで検討する選択肢は主に3つあります。

手間の少なさは上から順、削減幅は下から順です。まずプラン変更だけでも効果が出ることがあるので、いきなり乗り換えを検討しなくてかまいません。

自宅の固定回線も同じです。使っていないオプションが付いたままになっていないか、明細の内訳を確認します。

3. 電気・ガス(所要 1〜2時間)

電力・ガスの小売は自由化されており、契約先とプランを選べます。

見るべき点は2つです。

契約アンペアを下げる場合は、同時に使う家電を考えて判断してください。ブレーカーが落ちる生活は、節約以前に不便です。

なお電気・ガスの料金は、燃料費調整や各種制度によって変動します。プランの比較は、必ず現時点の条件で行ってください。数年前の比較記事の結論が今も正しいとは限りません。

4. 保険(所要 数時間〜/家族と相談)

金額が大きく、しかし判断が難しい項目です。ここから先は時間をかけてください。

保険を見直す出発点は、商品の比較ではありません。必要な保障額を先に出すことです。

この順で考えると、必要な保障額は多くの人が思っているより小さくなることがあります。逆に、足りていないことが分かる場合もあります。

保険の見直しは「安くする」ことではなく「過不足をなくす」ことです。減らすべきでない保障を減らすと、節約どころではない損失になります。判断に迷う場合は、特定の保険会社に属さない専門家に相談してください。

5. 住居費(所要 数日〜/状況次第)

支出の中で最も大きいことが多い項目です。ただし動かすには条件があります。

賃貸なら、更新のタイミングが検討の機会になります。同じ建物・同じ条件で募集されている部屋の家賃が今の自分の家賃より低い場合、交渉の余地があることがあります。

持ち家で住宅ローンを返済中なら、借り換えの試算をする価値があります。判断材料は金利差だけではありません。残りの返済期間、残債、借り換えにかかる諸費用を含めて、総額で比較してください。金利が下がっても、諸費用を含めると得にならないことがあります。

金融機関のシミュレーションを複数使い、条件を揃えて比べるのが確実です。

6. 車の維持費(所要 数時間〜/家族と相談)

車は、車両価格よりも保有し続けるコストが大きい支出です。

内訳を書き出すと判断しやすくなります。自動車税、任意保険、車検、駐車場代、ガソリン代、メンテナンス費用。これを月割りにすると、一台あたりの実際の負担額が見えます。

そのうえで検討する順は、

  1. 任意保険の補償内容と等級、特約の重複を確認する
  2. 駐車場の契約を見直す(相場が変わっていることがあります)
  3. 使用頻度が低いなら、保有そのものを見直す

3つ目まで踏み込むかどうかは、地域と生活によります。公共交通が使えない地域で車を手放す判断は、節約ではなく生活の破綻につながることがあります。無理に検討する項目ではありません。

7. 会費・手数料(所要 1時間)

最後に、細かいが放置されやすい項目です。

一件あたりは小さいものの、放置していると気づかないまま続きます。ここまでの6項目を終えた後の仕上げとして処理してください。

見直しの効果を消さないために

固定費を下げると、多くの家庭で同じことが起きます。浮いた分が、いつの間にか別の支出に吸収されるのです。

これを防ぐ方法は一つで、削減できた金額を別の口座に自動で移す設定にすることです。生活費の口座に残っていれば、使われます。見えない場所に移せば、残ります。

固定費の見直しで月1万円を捻出したなら、給料日の翌日に1万円が自動で貯蓄用口座へ移るようにしておく。この一手間を加えて、はじめて見直しが家計に定着します。

まとめ

固定費の見直しは、順番を決めて上から処理していけば、ほとんどが一度で終わります。

すべてを一度にやろうとせず、判断のいらないものから片づけてください。最初の1項目が終われば、その分は翌月から自動的に効き続けます。